Life Cycle Engineering Lab.

ライフサイクルエンジニアリング研究室

研究プロジェクト

Research Projects

ブロックチェーン技術を基盤としたストックベース循環マネジメント

製品の資源循環をマネジメントするためにブロックチェーン技術を活用したデジタルプラットフォームを構築しています。このプラットフォーム上で全製品の使用履歴や状態をライフサイクルを通じて把握し、それらの情報に基づいて廃棄のタイミングやその量を予測することで、中古製品やその部品がスムースに再生・再利用されるような仕組みを提案しています。特に、製品の使用中から需要側とのマッチングを行う仕組み「世界まるごとハウマッチ (Pricing products in use)」を導入することで、廃製品やその部品といった人工物ストックの再利用可能性を格段に高めることができることを仮想実験により示しました。

製品ライフサイクルCADシステム

製品や部品の生産から再資源化に至るライフサイクルプロセス全体の流れを計算機上で設計・評価するためのモデル、およびシミュレーション手法を提案しています。このモデルに基づいて製品とそのライフサイクルを統合的に設計するための方法論についても研究しています。これまでの研究成果として、ライフサイクルモデルと製品構造との関係を形式化することで、メンテナンス、リユース、リマニュファクチャリング、リサイクルといった様々なライフサイクルオプションに応じた最適な製品構造の設計を支援するCADシステム(ライフサイクルCAD, LC-CAD)を開発しました。

社会インフラのメンテナンス技術の継承

道路や橋、トンネルといった社会インフラの維持管理は未だに熟練技術者の経験と勘に大きく依存しています。彼らはコンクリート構造物の打音検査時に、どこを見て、どこを打ち、どのように音を聞き分けているのか? この問いに答えるために、打音検査の全プロセスを画像と音声で記録し、構造物に対する打撃点の位置とその時の打撃音、検査担当者の業務経験年数などを統計的に解析しながら、機械学習を用いて熟練技術者の “勘所” を明らかにする研究を理化学研究所と共同で行っています。膨大な検査データの学習結果に基づいて、若手技術者と熟練技術者の違いを視覚化し、インフラ維持の分野におけるノウハウの伝承を支援したいと考えています。

仮想環境での製品デザインレビュー

製品やサービスのデザインをユーザーの視点で評価するためには、その製品が使用される環境を忠実に再現することが重要です。本研究では、製品サービスシステムの感性評価を実施するためのデザインレビュー環境をセルフレジのメーカーやレジが設置される小売店等と共同で構築しています。店舗内の環境のみならず、そこで働く従業員や他の客の挙動も仮想空間内に再現するための仮想化技術を開発しています。

仮想テレポーテーションによる働き方の変革

「どこでもドア」を実現する仮想テレポーテーション技術 “TeleGhost” を開発しています。世界の好きな場所(観光地やオフィスなどパブリックな場所に限る)に(仮想的に)瞬間移動し、現地の人と同じ空間でコミュニケーションを行うシステムの実現を目指しています。遠隔地の自由視点映像をNeRFと呼ばれるニューラルネットワークを用いて生成する点が技術的なブレークスルーとなります。また、TeleGhostのような人間拡張(Human Augmentation)技術が普及した社会における新しい働き方についても提案しています。

シェアリングビジネスのシミュレーション

ライドシェア、服のシェア、家電のシェアなど、様々なシェアリングサービスが登場していますが、それらのビジネスモデルは従来の売り切り型ビジネスと比較して複雑であり、収益性や環境負荷を正確に見積もることは困難です。本研究では、エージェントベースシミュレーションによって、シェアするモノの状態やユーザーの挙動などを個別に再現し、様々なシェアリングビジネスの長期的な環境性・経済性を評価する手法を開発しています。

縮小市場における事業者間の競合と連携

日本の人口減少に伴い、国内の様々な市場が縮小傾向にありますが、多くの金属資源を必要とする製品の市場においては、リサイクルによって全ての資源需要を満たしながら市場の縮小に対応することが可能だと考えます。その場合に、主に新規資源の採掘・輸入・精錬に関わる事業者が戦略的に撤退・統合・事業転換を図ることが求められますが、本研究では業界全体のマテリアルフローを考慮した最適な事業者間連携の戦略を策定するための支援を行っています。

介護ロボットの遠隔マネジメント

日本では介護人材の不足が社会のサステナビリティを脅かす深刻な課題となっています。しかし、完全自律型の介護ロボットが登場し、これまで人間が担ってきた複雑な業務を代替できるようになるのは当分先のことだと予測されています。そこで、一人のオペレーターが遠隔で複数台の介護ロボットをモニタリングし、各現場の個別の状況に合わせて臨機応変に指示を出すことのできるシステムを開発しています。各現場のデジタルツインを活用して変化する状況の認識とタスクの組み立てを人間が担い、個々のタスクの実行を自律型ロボットが担うという新しい協働の形を提案しています。

社会技術システムシミュレーション

製造業を中心とした循環経済(Circular Economy, CE)への移行シナリオに基づき、資源循環型のビジネス形態が社会の低炭素化に与える影響を分析することで、CEがカーボンニュートラル(Carbon Neutral, CN)を実現するメカニズムを明らかにします。CEは、人々のライフスタイルや製品・サービスの提供形態を含めた生産と消費のあり方を根本的に変えるものであり、その影響の範囲を正確に見極め、長期的な展望に基づいてCEの脱炭素ポテンシャルを見積もる必要があります。本研究では、製品/ビジネス/社会の3つのレベルを統合した社会技術システムシミュレーションを開発し、循環ビジネスとそこで用いられる技術が社会の低炭素化に与えるインパクトを定量化します。

PaaSを前提とした製品のサーキュラーデザイン

Product as a Service (PaaS)を前提とした製品の新しい機能や構造について研究しています。たとえば、シェアリング専用の自動車は個人所有を前提とした既存の車とはそのデザインが大きく変わる可能性があります。また、車やスマホのサブスクリプションサービスが普及しつつありますが、これらのサービスではユーザーから使用済み製品を確実に回収する仕組みになっているため、アップグレードしやすい構造にしたり、高価な材料をふんだんに用いて長寿命化やリサイクル性向上を図ることが、サービス提供者の利益に直結するようになります。

Editable Reality (編集可能現実)

ビデオ透過型のヘッドマウントディスプレイを通して見た現実世界の任意の物体を、あたかも仮想3Dモデルのように自由に編集することを可能にするEditable Realityのコンセプトを提案しています。編集可能な物体には、空間や人物も含まれますので、自分が働く場所(オフィスや学校)を、例えば実際よりも広くしたり、周囲の人間を消したり、窓から見える景色を変えたりなど、より快適に過ごせる空間に編集することができます。既存の人工物をベースに、これにオリジナルなアイデアを加えて新しいデザインを生み出すためのツールとしても活用したいと考えています。

地域循環共生圏におけるビジネス創出

地域循環共生圏とは、地域で循環可能な資源はなるべく地域内で循環させ、それが困難なものについては物質が循環する環を広域化させていき、重層的な地域循環を構築していこうという考え方です。本研究では、何度でもリユース可能な汎用部品と、地域内で産出される資源を用いて製造された専用部品を組み合わせることで域内の製品需要に応える自立・分散型の循環ビジネスを提案しています。日本国内には膨大な人工物ストック(廃製品や都市鉱山)があり、これを活用することで資源の輸入を最小化しながら生活水準を維持することが可能だと考えており、これをシミュレーションによって立証することが研究の目的です。

メンバー

社会人学生(博士前期・後期)も随時募集しています。

教員

  • 教授 福重真一(論文や受賞等の研究業績はこちら

大学院生

  • 博士後期課程 1名(2024年度受入予定)
  • 博士前期課程 8名

学部生

  • 学部4年生 9名
  • 学部3年生 9名(2024年度受入予定)

研究室の年間行事

全体ゼミ(週1回)

グループミーティング(週1回)

ゼミ合宿(年2回、自由参加)

歓送迎会(随時開催、自由参加)

海外サマースクール(年1回、自由参加)

工場見学会(年5回ほど、自由参加)